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手を上向きに、降る。宙に浮いた球は弧を描き、剣先に収まる。

 

このような遊び方をする玩具は世界中に存在し、日本では“けん玉”という形で古くから親しまれている。その生まれは江戸時代。当初酒席の遊びであったそれは、明治時代に入るにつれ徐々に子どもの遊びへと変化していった。

 

科学技術の発展や時代の風潮も受け、現代の子どもの一般的な遊び相手は(残念ながら)その玩具ではない。しかし今でも、けん玉は人々にとって身近な存在であり続けている。平成の現在、それは思わぬところで新しい存在価値を持ちアーカイブされつつある。

 

東京は原宿。昼も夜もなく若者が集う創造的無法地帯に、その姿はあった。古き良き日本の伝統玩具は、情熱的かつ混沌としたその街にはそぐわない。正反対の存在であるといっても過言ではないだろう。ではなぜ若者の街原宿で、今けん玉が受け入れられているのだろうか。

 

その答えは、ファッションにあった。

ある米国の若者が日本のけん玉を持ち帰り、ヒップホップ系の音楽に合わせ様々な技を披露する様子を動画サイトに投稿し、話題をよんだ。それをきっかけに、ファッション性のある新たなストリートパフォーマンスとしてけん玉は世界に認知されるようになった。

 

またそのファッション性に、アパレル業界からも注目を集めている。あるファッション専門店はブランド物のけん玉を販売し、独自性と柔軟性をアピールした。実際に、来店客からの評判も上々だという。

 

独特の嗅覚と研ぎ澄まされたセンスで世界的に有名な日本の若者ファッションにも、ペニーやキックボードと同様、ファッションの一部としてけん玉が取り入れられる様を見たことのある人も少なくないだろう。

 

けん玉は逆輸入されることにより、新たな価値を付加し日本へ帰ってきたのだ。

 

この文化の「逆輸入」は、しばしば日本人に文化価値を再認識させる役割を担っている。

言い換えると、一旦見逃してしまった価値があることを認めているということだ。それは我々日本人の反省点であるといえよう。

しかし、他が見出してくれた新たな価値はそのものの魅力的なスペックの一つとして、有難く頂戴することにしよう。

見方により、形は変わる。

世界は動き、創造は時代を先駆ける。

心の感度を上げ、真正面から飲み込み咀嚼しよう。

 

おもしろきこともなき世をおもしろくすみなしものは

心なりけり。

 

Theme

 

剣玉

 

けんだま
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